オープンデータ時代の個人の生き方:サービスクリエイターとしての大きな可能性

最近FreebaseというサービスのAPIを触ってみた。Freebaseはオープンなデータベース。ユーザーが映画や人物などのデータをFreebaseに投稿、編集して、蓄積されたデータを共有することができる(参照:あらゆるデータを詰め込んだデータベース「Freebase」)。


「あちら側」にデータを保存することに慣れて大分経つけれど、データが第三者に提供されるシステムが整備されてきた。Freebaseのようなサービスを触ってみると、自分でデータベースを持たないでもサービスが作れるようになったことは、改めてもの凄いことだと感じる。ビジネスにおいても個人の生活においても、データを持つ者はいかに解放(共有)するか、持たざる者はいかに活用するか、が現在のようなオープンな時代には大事になってくるのだと思う。


今ではYouTubeFlickrなどに蓄積されているデータを誰でも活用できる。誰かが投稿した動画や画像に対するコメントや関連するコンテンツなどを、PHPなどのプログラミング言語を使えば簡単に取得できる。このデータのオープン化をうまく利用すれば、個人がYouTube上にある動画を活用して新しいサービスを開発することもできるし(例:TimeTube)、オープンデータベースを利用して面白いものを作ることだってできる。(例:Cinespin)。


YouTubeFlickrなどのサービスプロバイダーはこれからもウェブサイトのユーザビリティの向上や小さな機能も少しずつ追加を行っていくだろうけれど、彼らは新サービスの開発よりも、蓄積するデータの量、質、種類を増やし、その蓄積されたデータを第三者が自由に利用できるようにAPIを充実させることに注力していくのだと思う。

実際にいくつかのサービスの動きを見てみると、全体としてサービスプロバイダーからデータプロバイダーへと重点がシフトし始めているのが分かる。YouTubeでは新しいバージョンのAPIを3月にリリースしてて、YouTubeの外からでも動画をアップロードできるようにするなど機能を強化した。写真共有サービス大手のFlickr開発者用サイトを4月に立ち上げてAPIをアピールしているし、Yahoo!Web2.0 ExpoのKeynoteオープン戦略を発表していた。他にPhotobucketやVeohなどオンラインでデータを教習するサービスの多くは同じような動きをみせていて、自社のサービス上に蓄積されたデータのオープン化と、それを第三者に活用してもらうためのシステムとドキュメンテーションの充実に努めている。


こうやって「あちら側」のデータがオープンになったことで、誰でも色々なサービスを開発できるようになった。データを所有することで生じるコスト(主にハードウェア)も削減できるし、個人では到底収集不可能な量のデータを活用して全く新しいサービスを作ることもできる。もちろんサービスの開発には相変わらず様々な知識が必要だけど、サービス開発の敷居が低くなっているのは間違いない。サービスを提供する「場所」が自社のPC用ウェブサイトから個人のブログやSNSやモバイルへと拡大していることも、この個人のサービスクリエイター化の波を後押している。その一方で、更に大事になってきているのが、どういったサービスを作るかという「アイディア」と実行する力。ただ、新しいことを社内でやらせてくれる会社は少ないみたいなので、個人または小規模のグループにサービスクリエイターとして躍進するチャンスが広がっているのだと思う。


梅田望夫さんは著書「ウェブ時代をゆく」で、「『新しい職業』は予め定義することはできず、新しい世界に飛び込んで、手さぐりで当事者が作っていくような性格のものである」とし、その「新しい職業」は時代の変化と共に生まれると言っている。僕は、「時代の変化」であるデータのオープン化は、持たざる者である個人をエンパワーして、「新しい職業」の一つであるサービスクリエイターとしての生き方に大きな可能性をもたらすのだと信じている。